2017 C翼舞台レポート



2017年8月、舞台版キャプテン翼を見に行ってまいりました。
いやもう、とにかく不安でして。制作発表から数か月、「なんで今更?」「誰が見るの?」とマイナス思考で「キャストがイメージと違うのでは」などと勝手な不満を抱え、それでもやっぱり気になって逐一チェックせずにはいられない根深い業に苦しんでいたところ、コジケン仲間のNさんが観劇されると聞き、ご一緒させていただくことになりました。
で、結論から言いますと…

見て良かったーーーーーーーーー!!
面白かった! そして、コジケンだったーーーーーーーーー!!!

2.5次元ってこういうものだったのか。舞台だからできることってあるのね。キャストが男だけって、なんてなんて素敵なの。
コジケン歴30年以上を経て初めて公式リアル生コジケンを目の当たりにし、感涙にむせぶこと吉良監督のごとし。わしの夢…、小次郎! 若島津!!
…とまあ、超傑作だったわけですが、実際にどんな感じだったのか、どこらへんがコジケンなのかをレポートしていきたいと思います。
(コジケンばっか目で追ってたため、ストーリーの詳細な内容についてはウロ覚えです。間違いがありましたら申し訳ございません。)


■第一幕
まず大まかなストーリーですが、「東映まんが祭りと同じ」と思っていただいて差し支えありません。
ジュニアユース大会での優勝後、全日本チームが再集結し、ヨーロッパ+南米のスター選手を集めた世界選抜チームと戦います。試合の前半は若島津、後半は若林のパターンで、最後に翼が決めて逆転勝利。まあ主要キャラみんな出して舞台1本やるならこれしかないでしょう。
定番の話を傑作と化したのは演出の見事さと演技の素晴らしさ。特にキャラクター解釈が完璧で、日向と若島津の初登場シーンを見てすぐに「これはイケる!」と確信いたしました。
下の図1は冒頭の、全日本チームがドバイに向かう飛行機の中。



当然のように日向と若島津が並んで座っていて、それだけでも萌えるのですが、注目は若島津の異様なほどの姿勢の良さです。
周りがだらしなく眠りこける中で一人だけ、背筋を伸ばし脚をきちんと揃え、両手を膝の上にのせている。いつ何時も礼儀正しく気を抜かない若島津の育ちの良さ。寝ていても偉そうな日向とのコントラストも目を引きます。この一瞬の描写に、制作者のコジケン観が表れるわけです。
ちなみになんで最初ドバイに行ったのかは覚えていません。大会から帰る途中のトランジットだったかな…(どんな些細なコジケン要素も見逃さないが、本筋は頭に入っていないコジケン専用メモリー搭載)。

ドバイ到着後、少しの間自由行動となります。つかの間の自由に羽を伸ばし、街に出てはしゃぎまくる全日本の選手たち。
この場面はサービス満載でありまして、選手たちが舞台を飛び出して客席を駆け回ったりしてくれるのですが、日向と若島津だけは徹底的に二人の世界。常に皆とは距離を置き、別行動を取るのです。片時も離れず、落ち着いた様子で観光地を回るその姿は、修学旅行の集団に紛れ込んだ新婚カップルのよう(図2)。


       

上の図3は偉そうに街をのし歩く日向と、影のように寄り添う若島津。
日向さんはとにかくめちゃくちゃカッコよかった。鍛え上げられた肉体(捲った腕がものすごく目立つ)、灼けた肌、低い声。寡黙で、立っているだけで威圧感があり、そして嫁同伴。「おまえらガキどもとは違うんだよ」というオーラに満ち溢れています。
若島津については自分の中でハードルを上げすぎているので、どんなイケメンでも納得できないだろうと思っていたのですが、日向の隣りにいたのは紛れもなく若島津でした。ストレートの長い髪(舞台で見ると超キレイです)、背は日向より少し高く(後で調べたら日向175cm、若島津177cmとのこと。完璧すぎる!)、日向に比べるとやや細身の引き締まった体。遠目からなので顔はよくわかりませんが、日向と並ぶと若干色も白く見えます。
そう、肝心なのは、二人並んだ時のバランスだったのです。単体でイメージ通りだったとしても、ペアが成立しなければ意味がない。計算し尽くされたキャスティングと、キャラクターを完全に理解した演技が、リアルコジケンを実現したのです!


       

二人の演技で最も気になったのは、スキンシップの多さですね。とにかくやたら触る。
ドバイの場面では、日向がもめ事を起こして騒ぎになりそうなのを若島津が止めたりとか(図4)、日向が土産物屋の客引きにつかまって帽子を買わされたりとか、細々とした無言劇が繰り広げられるのですが、何かあるたびにいちいち腕をつかむんですよこの人たち。図5は日向が客引きに引っ張られて舞台袖に消える直前、とっさに若島津の腕をつかんで引き寄せるところ。ギャーーーッと脳内で悲鳴を上げる私。何これ必要? 必要性があるとしたら腐向けサービス? っていうか本当にコジケンなの??
その後も肩に手をかける、歩き出す際に腰に手を当てる、日向が怒って飛び出したのを若島津が追いかけていって二人とも戻ってこない(しばらく経ってから一緒に現れる)等、気になる表現が続きます。こんな描写は他のキャラにはまったくありません。
誰が見ても二人はペア設定で、特別な関係だとわかるように演出されていました。実はそれが第二幕への伏線となっていたわけですが、さすがに気がつきませんでした。


■幕間
Nさん 「あやしいよねあの二人。なんでいつも別行動? そういう演出なのかな」
ミキコ 「それにやたら触りすぎ! あれデキてますよ絶対。ああ、みんなちゃんとわかってくれてるー!!」
望外の喜びで頭に血が上る。ああ、この感動を語りたくてたまらない。連れがいて本当に良かった…(ありがとうNさん)。


■第二幕
世界選抜チームのメンバーが発表され、記者会見が開かれます。各選手が日本との試合への意気込みを語るのですが、例によってシュナイダーが「なぜ若林が出ない。若林のいない日本に勝ち目はない」とかほざく。
下の図6は合宿中、テレビで会見を見た後の全日本チームの様子です。あまりにも相手が強すぎて自信をなくし、弱気な石崎や暴言を吐く早田に日向が怒ってケンカになり、さらに他のメンバーも各自勝手なことを言い出して大荒れになる。しかしこの狭い室内で、若島津だけは騒ぎに加わらず、テレビの前にじっと座っています。
とても印象的なシーンでした。この時ばかりは日向を止めることもせず、一人で考え込む若島津。おそらく頭の中ではシュナイダーの発言が繰り返されていたことでしょう。内に秘めた苦悩。しかし皆のように感情をあらわにすることはない。そんな若島津の性質をよく表しています。よくわかってるなあ演出の人。


       

その夜。
川原で日向がひとり座っている。そこへ若島津登場(図7)。
「日向さん」
「若島津、どうした」
「眠れなくて…」
「おまえもか」
なんて会話が交わされます。合宿では部屋が別々なので、以心伝心で抜け出してきたに違いありません。
この時なぜか、舞台袖から二人の様子をうかがっている岬くん。あんまりにもいい雰囲気だったので、声をかけるタイミングを計っていたのでしょうか。あっ、出るの早いよ岬くん。もうちょっと二人きりにしておいてあげてよー!(マジでラブシーンかと思って色めき立っていた私)
三人で今度の試合について話しているところへ、他の選手たちも続々登場。腹を割って話し合い、険悪だった雰囲気も収まって、笑顔が戻る全日本チーム。そして皆で川に飛び込んで子供のようにはしゃぎ始め、バシャバシャ水をかけ合ったりしてとっても楽しそう。しかし、この輪の中に入れない者たちがいます。
腕組みして川原に仁王立ちの日向と、そんな日向を見守っている若島津(図8)。この後が凄かった。



ここで会場大爆笑!
参加したいのに「あんなガキみたいなことできるか」というポーズを崩せず、必死で若島津に念を送る日向。これでちゃんと通じるあたりが夫婦っぽい。さらに嫁が旦那に蹴りを入れて川に突き落とすという衝撃のオチ。このネタが成立するのは、二人のキャラ&関係性あればこそです。
徹底的に「偉そうな旦那と従順な嫁」として描いてきた目的はこれだったのか。旦那がボケて嫁がツッコむ。劇中で最も沸いたのが日向と若島津の夫婦漫才ですよ。しかも公演ごとに何パターンもあるという(他所様のレポによると、若島津の方が天然ボケのケースなども)。あまりにウケたために増やしたのか、もともとサービスシーンとして用意されていたのかは知る由もありませんが、制作サイドがこのペアを重視していたことは事実でしょう。これはもう、この舞台のメインカップルと言っても過言ではないと思った次第です。

さて、日向と若島津込みで水遊びをして結束を深めた全日本。ついに世界選抜チームとの試合の日を迎えました。
サッカーの場面はキャストの皆さんの頑張りと身体能力に、ただただ感動するばかり。各選手それぞれに見せ場があり、オーバーヘッドもツインシュートもスカイラブハリケーンも見事に再現されておりました。
若島津は前半のみの出場ですが、誰よりも出番が多かった気がします。自分の見せ場として三角蹴りや守刀ディフェンス・正拳ディフェンスがあり、さらに敵の見せ場にも当然いるので(3失点)、出ずっぱりな感じ。止めても取られてもとにかく派手なアクション、失点して悔しがるのもケガをして悶え苦しむのも試合に彩りを添えるもの。地味で堅実なプレーなど求められません。若島津は作品の「華」なのです。
そんなわけで前半終了間際に手をケガしまして、若林と交代することに。「俺はまだやれる!」とか粘り、周りがワーワー言って止めるが聞かない。しかし…(図9)。



一瞬時が止まり、見つめ合う二人。ここの間がたまりません!
無言で頷く日向と、納得したようにピッチを去る若島津。これはまさに以心伝心、目と目でキックオフ! ああ、生で拝めるなんて夢のよう…。

後半からは、地味で堅実な若林が守るので安泰です(いいんです、わかってるから)。後は一通りお約束、というか原作っぽいシーンが盛りだくさんで、往年のファンを楽しませてくれます。黄金コンビの活躍、早田退場、三杉様投入、立花兄弟と次藤の合体技、石崎の顔面ブロックなどなど。
中でも凄かったのは、試合の真っ最中に日向の回想シーン(沖縄での特訓)が入ったところですね。暗転したと思ったら服が変わってて、海辺に倒れている。何度も荒波に向かっていっては跳ね返される苦しい特訓の末、完成したのは雷獣シュート。で、また試合に戻ってこのシュートを決めるのですが…日向さんカッコイイーーー!!!
そうだよね、ここ外せないよね。日向ファンだったら、というかC翼ファンだったらこのシーン再現してほしいよね。この無理矢理な展開を見事に演じ切ってくれた日向役の方に、心から感謝です。

最後は翼の逆転ゴールで試合終了。大団円で幕を閉じました。
いやー、面白かった。見て良かった。コジケン視点のことばかり書きましたが、一般のC翼ファンとしても十分に楽しい作品でした。こんな素晴らしい舞台を作ってくれた制作者の方々、個性の強いキャラを見事に演じてくれたキャストの皆さん、本当にありがとうございました!

そして、最後にどうしても一言叫びたい。
日向と若島津は最高のコンビです! そう、やっぱりコジケンは公式だったんだ!!!



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