◆◇◆



 「若島津、女子が呼んでるぞ〜」
 「…またかよ…」
 談話室に呼びに来た当番に、明らかにテンションの下がった顔を向け、若島津は渋々と立ち上がった。溜め息をつきながら部屋を出ていく。
 ここ数日、女子による若島津の呼び出しが毎日続いていた。
 きっかけは某サッカーマガジンで特集した、高校生イレブンのポジション別ランキングだった。
 当たり前のようにFW部門とGK部門の一位を取った二人は、そのサッカーマガジンからの取材を受けたのだ。
 ランキングがただ人気があるだけではなく、実力重視だった事と、その雑誌がいつも読んでいる雑誌で、ミーハーな部分が無いことを知っていた事に加え、学園側からの強い要請もあり二人は取材を受けたのだ。
 そして出来上がった雑誌を見て驚いた。どの選手よりもでかく、若島津のバストショットの写真が載っていたのだ。
 それがまた、すごく良く撮れている写真だった。
 ゴール前に立った若島津と対峙しているのはきっと日向なのだろう。うっすらと口元に不敵とも言える笑みを浮かべている。
 白いかんばせ。それを縁取る、日に晒され続けている割りにはきれいな黒髪。床屋に行った時しか手入れなんてしないだろうと思うのに、いやに整った眉と黒の際立った切れ長で大きな瞳。
 思わず見馴れているはずのチームメイトさえ、ドキリとする様な写真だった。撮られた当の本人は、苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、その写真に誰もが魅了された。
 そしてその翌日から、東邦の生徒だけではなく、他校の女生徒まで若島津を訪ねてやってくるようになったのだった。
 東邦は東京とは名ばかりの山の中に建っているにも拘わらず、グラウンドから始まり、正門の前や通学路、はては寮の前にまで女生徒達はやってきた。
 知らないところで情報がだだ漏れな現代において、少女達が若島津の居場所を突き止めるのは、至極簡単な事だった。
 そして若島津は毎日うんざりとする程、彼女達の呼び出しを受ける事になったのだった。
 日向は肩を落として出ていく若島津を、知らぬ内に睨んでいた。
 若島津がモテるのは今に始まった事ではない。
 中等部の頃から、わざわざ毛色の違う若島津を見に、女子部から少女達がやってくることがままあった。だがここまで大騒ぎになったのは初めてだった。
 日向は自分の心がザワリと波立つのを感じた。この状況が面白くないと感じる自分がいる。
 普通であれば、若島津一人だけがモテて面白くないと思うのだろうが、今の自分は若島津を呼びつける女達に対して、面白くないと感じているのだ。
 俺の若島津なのにという、強い独占欲が湧いてくる。若島津に対しても、いちいち女の呼び出しに応じなくてもいいだろうにと腹が立った。
 こんな風に思うのには理由がある。
 日向は若島津の事が好きなのだ。
 そう自覚したのは、高一の時に寮の部屋もクラスも別々になった時だった。
 部屋に帰った時のポッカリとした喪失感。お帰りなさいと言って自分に向けたあの穏やかな笑みを、他の誰かにするのかと思うと、無性に腹が立った。
 その感情が恋だと認識したのは、同じ様な事をクラスで聞いたからだった。
 その日は昼練がなかったので、日向は昼寝を決め込んでいた。ウトウトとする日向の耳の横で、クラスの誰かが相談をしていた。
 何とはなしにそれを聞いていた日向は、次第に眠気が飛んでいった。されている相談内容が、笑っちゃうくらい自分と同じだったのだ。
 日向はいつしか全神経を、耳に集中させていた。同じ事を相談しているこの答えを聞けば、自分の中にあるこのモヤモヤの原因が分かるかもしれないと思った。
 そんな日向の隣で、二人はまさか聞いているとは思わずに、話し続けている。
 『バカだなぁ、お前そりゃ嫉妬だよ。嫉妬』
 『嫉妬ぉ〜?』
 『そうだよ、嫉妬だよ。お前はその娘の事が好きなんだよ。だから他の奴に笑ってたりすると腹が立つんだよ』
 『そうなのかぁ…。俺、あの娘の事が好きなのかぁ…』
 『なに今頃気が付いてんだよ! バカだなぁ』
 日向は思わずガタンと音をさせて立ち上がった。
 『わっわりぃ。日向。うるさかったか?』
 話していた二人がビビった様に自分を見たことで、日向は自分が必要以上に、大きな音をさせていた事に気が付いた。
 『いや、別に…、お前等の話がうるさかった訳じゃねぇんだ…。こっちこそわりぃ、驚かせたな』
 日向はそう言い置くと、そそくさと教室を後にした。先程の二人が、そんな自分を怪訝そうに見ていたが、日向はそれを気にかけられない程動揺していた。
 (俺はあいつが好きなのか…?)
 そう自覚した途端、今まで自分の中にあったモヤモヤが、全て説明できた。
 好きという感情は不思議なものだ。それからというもの、若島津の行動一つ一つが気になるようになった。
 元々よくつるんでいたが、この事を自覚してから日向は、若島津となるべく一緒にいるようになったのだった。
 「若島津の奴、最近すごいね〜」
 出ていく若島津の背を睨む様に見ていた日向の横に、ポテチの袋を抱えた反町が寄ってきた。
 「その内言い寄ってくる娘の誰かと、くっついちゃうのかなぁ」
 なんとなくテンションが下がり気味で言う反町の言葉に、日向はギクリとなった。そんな事考え付きもしなかったからだ。
 そうだ。若島津だって普通の男なのだから、女の子と付き合ってもおかしくはない。
 反町の言葉で急に現実味を帯びたその事に、日向は激しく動揺している自分に気が付いた。
 「いいの〜、日向さん? 若島津のこと取られちゃうよぉ」
 まるで日向の心中を察したかの様に、反町はチラリと日向を見て言った。
 日向はそんな反町の言葉を聞こえないフリをして、談話室を後にしたのだった。



   ◆◇◇◆



 呼び出しからうんざりした顔で戻ってきた若島津は、談話室に日向がいないのに気が付くと、様子を聞きたがる反町を振り切って自室へと戻った。
 若島津の同室者は日向だ。今年の引き継ぎで、日向と若島津はそれぞれキャプテン、副キャプテンとなった。部長副部長も兼任している。
 東邦スポーツ寮は、部の円滑な運営を生徒に自主的にさせる為、部長副部長は同室になる事になっていた。
 当然その役割を担う事になった二人も、この六月から同室になったのだった。
 「キャプテン、こっちに戻っていたんですか」
 どこかホッとした様にそう言って、若島津は日向に近づいた。だが日向はベッドに横になったまま、若島津に視線を向けようとせずに、ただ黙って天井を睨み付けているだけだった。
 「どうかしたんですか…?」
 様子のおかしい日向に、若島津が訝しげな声をかける。
 「別に」
 日向は若島津を避けるように、ゴロリと背を向けた。背中に若島津の戸惑った様子が感じられたが、日向はけして若島津の方を向こうとはしなかった。
 若島津の顔を平静に見ることが、今の日向にはできなかった。
 どのくらいそうしていただろうか。何も言わない日向に、若島津は肩を落としてため息をついた。
 「おやすみなさい。キャプテン」
 若島津はそれだけ言うと、自分のベッドにもぐり込んだ。日向が何も言ってくれない事に胸が痛んだが、きっと明日になれば機嫌も直っているだろうと、あきらめて目を閉じたのだった。
 一方日向は聞こえてきた若島津の寝息に、耳を傾けながら考え込んでいた。
 自分はこのままでいいのだろうか…。今は若島津にその気がなくても、反町の言う通り、いつかは日向の知らない女と付き合いだすかもしれない。自分はそれに耐えられるだろうか?
 自問自答しても、出る答えはいつも一緒だった。
 若島津が他の奴のものになるのは耐えられない。
 ならば後は若島津を手に入れる為の行動を、実行に移すだけだった。
 それから一週間後、日向に思いかけずチャンスがやってきた。
 隣の部屋のバスケ部員が二人とも、全日本ジュニアの代表選手に選ばれて、五日間程遠征で留守になったのだ。ちなみに日向達の部屋は西側の端にあり、隣はそのバスケ部しかいない。
 この絶好のチャンスを逃す日向ではなかった。その五日間の間に、日向は行動を起こすことに決めたのだった。



 隣が留守になってから三日後、今日こそ計画を実行に移そうと心に決めながら、日向は自分の部屋へと帰った。
 ドアの前で一度止まり、大きく深呼吸をする。
 いくら日向とは言え、好きな相手に告白するのだと思うと緊張した。ましてや相手は男であり、自分の一番信頼している友なのだ。
 その関係が今夜全て崩れ去るかもしれない。そんな考えも浮かんだが、不思議と日向は若島津に拒否されるとは思っていなかった。
 そう錯覚してしまうほど、日向に対する若島津の態度は他の誰に対するよりも違ったのだ。
 特別……そう感じる程に。
 日向は下腹部に力を入れると、意を決してドアを開けたのだった。
 中に入ると、若島津はベッドの端に座って雑誌を読んでいた。
 「おかえりなさい、キャプテン」
 日向が入ってきた気配を、感じた若島津が顔を上げた。自分に向けられた穏やかな笑みにドキリとする。
 日向は早鐘を打つ、自分の心臓の音を聞きながら若島津にゆっくりと近づくと、何度となく呼んだその名を呼んだ。
 「若島津」
 呼び慣れたはずのその名は、ひどく硬く響いた。若島津もいつもと違う日向に気が付いたのか、読んでいた雑誌を脇に置くと、訝しげに日向を見上げた。
 「どうしました、キャプ…」
 「俺はお前が好きだ」
 日向は若島津の言葉が終わらぬ内に、胸に秘めていた思いを打ち明けた。若島津が日向の突然の言葉に、面食らって息を飲む。
 「え…? いきなり…、どうしたんです?」
 「いきなりじゃない。…俺はずっと考えていたんだ」
 予想外の出来事に若島津が動揺しているのが分かったが、日向はかまわず若島津の肩を掴むと、ベッドに押し倒した。びくりと若島津の身体が震える。
 「キャプテ…」
 日向の行動をたちの悪い悪ふざけだと思ったのか、若島津はいさめる様に日向に呼びかけた。しかし日向は衝動に任せて自分を呼ぶ若島津の唇に口付けたのだった。
 「んっ、んっ…、うっん…」
 激しい口付けに若島津が苦しげに声を上げたが、日向は押し付けることで顎を固定すると、逃げる舌を追いかけて若島津の口腔内を存分に犯した。
 「っ、はぁ」
 ようやく解放すると、若島津は足りなくなった酸素を補おうと、大きく喘いだ。
 日向は目眩を覚えそうだった。
 口付けられて赤みを増した唇が濡れて光り、上気した頬や首筋と相まって、壮絶な色気をかもし出していた。
 若島津を欲しいと、本気で思った。
 若島津の目蓋がゆるゆると開き、濡れた黒目勝ちな瞳が日向に向けられた。
 「俺は、お前を…」
 その瞳の中に宿る拒絶を見るのが恐くて、日向は再び口付けた。
 押さえていた腕を放し、全体重を若島津の身体にかけて逃げられない様にすると、日向は手をその身体のラインに沿って這わせた。シャツの上から意図を持って触れると、若島津の身体が強張るのが感じられた。
 日向は興奮で焦る気持ちを抑えながら手を下げていき、殊更ゆっくりとズボンのジッパーを下ろした。その音が二人の息づかいしか聞こえない部屋の中で、嫌に大きく響く。
 日向は不思議だった。既に自分は、若島津を拘束できるほど強く押さえつけてはいない。両手が自由になっている若島津は、その気になれば自分から逃げ出す事が可能なはずだった。しかし彼はそうしようとはしなかった。
 日向は動きを止めて、若島津を見下ろした。その気配に堅く閉じられていた瞳が開かれる。
 「キャプテン…」
 若島津は日向を呼ぶと、その首をかき抱いた。若島津の予想外の行動に、今度は日向が面食らう。
 まさか若島津は、自分を受け入れてくれるというのだろうか…?
 「いいのか?」
 日向は信じられない気持ちで若島津に問うた。
 「は…はい」
 答えた若島津の声は震えていた。日向は胸に湧き起こった歓喜に、思わず若島津を抱きしめた。
 口付けの雨を降らし、夢中になって若島津の白い肌に愛撫の手を滑らせた。
 「はっ、んっ…」
 日向の手が触れる度、若島津はビクリと震えて鼻にかかった吐息を漏らした。
 そんな若島津の姿態を見ている内に、日向のボルテージが一気に高まった。既にガチガチに張りつめた己のモノを、ほとんど本能のままに若島津の後ろにあてがった。
 「いっ…たい…っ」
 全くと言っていい程、解されていないその場所をいきなり突かれ、若島津は乱れた息の下で、小さく痛みを訴えた。しかし初めて触れる若島津の身体に、すっかり夢中になっている日向の耳には届かなかったらしく、そのまま一気に身体を進めてきた。
 「ああっ!」
 脳天まで貫く様な激痛に、若島津は堪えきれず高い悲鳴をあげた。身体がガクガクと震え、日向の肩に爪を立てる。
 その悲鳴と自身の肩の痛みに、日向はハッと我に返った。
 「大丈夫か?」
 慌てて身を引こうとした日向の腕を、若島津が掴んだ。痛みに青ざめた顔のまま、かぶりを振る。
 「へい…っきっ…。はぁっ…、大丈夫…だから、くっあぁ、やめないでっ、我慢するからっ、ちゃんとしてくれなきゃ、やだっ…」
 快感よりも、痛みの方が強いであろう若島津の必死の訴えに、日向は激しく胸を打たれた。
 自分がこんなにも、若島津に許されているとは思わなかった。
 「若島津…!」
 思わず若島津を力一杯抱きしめる。
 日向は苦痛以外のものを感じてほしくて、痛みにすっかり萎えてしまった若島津に手を伸ばした。鈴口に親指を当てたまま、片手で揉む様にゆっくりと扱く。ヒクリと若島津の腹が震えた。
 徐々に勢いを増してきたそれを更に扱くと、クチュクチュと先走りの水音が室内に響いた。
 日向は鈴口に当てていた親指で円を描く様に、張りつめてきた先端に先走りの液を塗り込んだ。敏感な部分を撫でられて、若島津が堪らず声をあげる。
 「ああ、いっい」
 あからさまにあげた声を恥じたのか、ハッとして若島津が唇を噛んだ。
 「んっんぅ」
 それでもあがる声を必死に噛み殺そうとする若島津に、日向はもっと素直に感じてほしくて、彼自身を握ったまま胸にも手を伸ばした。白くなだらかな胸で色付く赤い粒を、少し強い力で摘まみ上げる。
 「ああっ…、はっあっ」
 小さな痛みが大きな快感に転じて、若島津の身体を大きく震わせた。
 日向は若島津の表情が溶け始めたのを見計らって、挿入したままであった自身を、緩く動かしはじめた。
 「ひっ、やっやあっ、あっあっ」
 粘膜を傷つけない為に、身体には自己防衛機能がついている。異物を挿入された若島津の粘膜も、ぬるりとした液体を分泌し始めていた。しかし多少滑りが良くなったとはいえ、本来受け入れるべきではない場所に、日向のモノで楔を打ち込まれた若島津の苦痛は大きかった。
 日向が動く度に、腸壁が引きずられて内臓が出ていく様な感覚と、許容以上の圧迫感に窒息しそうな程息が詰まる。酸素を求めて息を吸い込もうとするが上手くできず、ヒュッと笛の様な音が鳴るだけだった。
 日向はそんな若島津の様子に一旦動きを止めると、まだ勢いを失っていない前に手を伸ばして扱きだした。乾いてしまっていた先端が、濡れてくるまで煽ってから日向は再び動き出し、今度は腰の動きに合わせて若島津を扱いた。
 若島津は快感と苦痛を交互に与えられて、無意識に逃げようと腰をずり上げた。しかし容赦なく引き戻されると、より深い所に日向を打ち込まれて、身体が大きく仰け反った。
 変化が起こったのは、日向が挿入する角度を変えた時だった。
 それまで苦痛しか感じなかったその場所から、電気が走った様な感覚が湧き上がった。
 脊髄から脳にダイレクトに響く快感が走り抜け、若島津は思わず声を上げていた。
 「はっあっ、うそっ」
 今まで感じたことのない感覚に、声を堪えることができない。唇を噛むことさえできずに惑乱する若島津は、徐々に自分の理性が浸食されていく様な恐怖を覚えた。
 「あっあっ、ああ、んっうっ、くぅ、あ、はぁ…こわい…」
 「若島津…」
 声を震わせてしがみつく若島津を、日向は愛おしげに呼んだ。流れる若島津の涙を拭い取り、彼の感じるその場所に、早いリズムで腰を打ち付けた。
 「あっああっっ」
 激しく攻められて、付いていけきれない若島津が悲鳴を上げる。日向もそろそろ限界だった。
 深く打ち込んだところで、若島津はひときわ大きく震えると、絶頂を迎えた。ビクビクと震えながら射精する若島津に強く絞められて、日向も堪えきれずに絶頂を迎える。
 酸欠の身体に酸素を取り込もうと、荒い呼吸を繰り返す若島津を、同じく荒い息をつきながら日向は抱きしめた。
 ゆるゆると若島津の手が上がり、日向を抱きしめ返す。啄む様にその唇に口付けると、自然にお互いを求めあって深くなった。しばらく柔らかな舌の感触を楽しんでいたが、苦し気な若島津の声にようやく解放する。
 心地良い疲労感が漂う身体よりも、満たされた心が気持ち良かった。
 そして疲労困憊の若島津の様子を見る、余裕ができた日向は、初めてであるのにひどく激しい抱き方をしてしまった事にすまなさを覚えた。
 「ごめんな……」
 「キャプテン…」
 そう謝る日向の頬を手の平で包み込んで、若島津は穏やかに微笑んだ。
 「謝らないで下さい。俺がそう望んだんですから」
 そうじゃなかったら、いくら日向でも押し倒された時点で殴り倒していると言われて、日向は苦笑した。そして良かったと思う。若島津が自分を受け入れてくれて。
 「…すいません…。俺、もう腕を上げているのもしんどいかも…」
 日向に伸ばしていた手をぱたりと落として、若島津は半分落ちかけている意識を必死に保ちながら言った。本当はきちんと後始末をしてから眠りたかったが、日向を受け入れて限界まで体力を使い立たした身体は、もう言う事を聞いてくれなかった。
 「いいぜ、寝ちまって。後は俺がやってやるから」
 日向がベッドから立ち上がると、熱が離れてしまった所為で心細さを感じたのか、若島津の視線が不安気に日向を追った。
 「すぐ戻るから」
 日向は若島津の髪をかきあげて、その額に唇を落とすと安心させるように笑いかけた。
 自分の後始末をざっとして、日向は洗面器に水を汲むために廊下に出た。
 しんと静まり返った寮内は、先程までの熱い時間が嘘だったかの様にひんやりとしている。日向は洗面所で水を少し汲むと、足早に部屋へと向かった。あの時間が嘘ではないのだと安心したかった。
 部屋に帰ると、若島津は既に眠りに落ちていた。穏やかな寝息が日向を安心させる。
 若島津を起こさないように、お湯を足した洗面器でタオルをしぼって身体を拭いた。よほど体力が限界だったのか、若島津はピクリともしない。
 全てを終えて日向は同じベッドに潜り込んだ。既に一八〇センチを越えようかという男が、二人で眠るには少々狭かったが、若島津の体温を感じていたかった。
 「んっ…。キャプテン…?」
 日向の温かい気配に意識を覚醒させた若島津が、日向を呼んだ。
 「大丈夫だ。ここにいるから」
 そう告げると若島津は安心した様に微笑んで、再び眠りへと落ちていった。
 日向は無防備に眠る若島津を抱きしめながら、自分も眠りへとついたのだった。





- end -











タイトルに覚えのある方はお気づきかと思いますが、これは私原案のワンシーンを元にまれ助さんが具体的なストーリーを考え、小説の形に書き起こしてくださったものです。いやもう、ほんとスゴい職人芸。完璧です。ああっ、あのセリフ…セリフがッ……! アレはこんな激エロいシチュだったのですね!!(あ、元ネタ知らなくても全然問題ありませんので、ご存じない方はお気になさらぬよう)
こんな素敵な作品をいただけたうえ、ちょっぴりコラボ気分も味わえて(実際私は何もしてませんが)、会長とっても幸せです! まれ助さん、本当にありがとうございました〜〜vvv



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