総合
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各論の方でいろいろと勝手なことを書き連ねましたが、ここでは「若島津の存在意義」「若島津のキャラクターとしての特性」等を考察し、女性同人界を変えたと言われるほどの(?)彼の魅力と影響力について考えてみたいと思います。
原作における若島津の最大の特徴は、一言で言うと「二面性」です。
代表的な事例は次の3点です。
1.キーパーとは思えぬ外見
キーパーが長髪女顔で細身、というのは野球マンガで言えば「キャッチャーが華奢な美少年」のようなもので、普通はありえない設定。さらにその外見に似合わぬ空手技・攻撃的なプレイスタイルを組み合わせたのも画期的。
2.中学生編での変化
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3年後がこれですからね。本人もさぞ 無念でしょう。もともと可愛い系なら 別に怪しくなかったと思うんですが。 何かあったんですよね、あの人と・・・ |
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何しろこの人がそのまま育たなかった ことですね。流しの勝負師みたいで かっこよかった彼。このままいけば ゆくゆくは攻キャラかと思われたが・・・ |
中学生編で変わったキャラと言えば早苗ちゃんと若島津。生意気なガキに見えた小学生編から一転して可愛くおとなしくなってしまった中学生編。スカウトされてないにも関わらず東邦に入学した、というだけで十分怪しいのに・・・。早苗ちゃんと同じパターンということは・・・。
3.「日向さん」と「それ以外」への態度
日向のどんな無謀な行動にも耐え、自分の人生がかかった状態でも日向の都合を優先し、日向の言葉だけは素直に聞き、日向だけに子供のような笑顔をみせる。普段落ち着いた印象が強いだけにこの落差は衝撃的。
・・・こう並べるとたいへん個性的に作りこまれたキャラクターのようにも見えますが、果たしてそうでしょうか。これらの特徴から浮かび上がるのは、原作での若島津の微妙な位置付けです。
C翼における若島津の位置、それはズバリ「二人の影」です。
一人はもちろん日向小次郎、そしてもう一人は若林源三です。若島津は、日向の影であると同時に若林の影(これについてはそのうちカップリング研究・源健で詳しくやります)という宿命を背負って生まれたキャラクターと言えます。あの派手な外見やプレイスタイルは単に若林の逆、矛盾に満ちた性格や意味不明な行動は日向の付属品として都合がいいようその時々で適当に描かれているにすぎません。つまりT先生は「空手キーパー若島津」という一人の確立したキャラクターを描きたかったのではなく、「日向とセットにして映える」かつ「若林と正反対(しかも負ける)」という大前提で無理矢理若島津を作り出したと考えられます。若島津は単体では存在し得ず、あくまでこの二人の影にすぎないのです。
しかし、このネガティブな出自とおざなりな設定は若島津を「謎めいた」「奥の深い」キャラクターに見せ、彼をめぐる膨大なサイドストーリーの温床となります。また、原作における「どうにでも描ける」特性はそのまま同人誌にも受け継がれ、誰でも容易に「私好みの話」を作れる素材として、女性同人界の門戸を広げる役割を果たします。
若島津健は、あの原作の裏に果てしなく広がるドラマを想起させ、かつ読者の見たいイメージを自由に投影できる、という点で「少年マンガ界のファム・ファタル」であったと言っても過言ではないでしょう。
(いろいろバカなこと書いてすみません。20年近く想い続けてるとなんだか屈折してきちゃって・・・。うう・・・でもまだ言い足りない・・・。)
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