キャラクター研究:日向小次郎



日向小次郎論


日向小次郎論

不思議なキャラクターである。
主役と並ぶ登場頻度、主役を凌ぐ人気を誇りながら、どうにもマイナー感が拭えない。中学生編全国大会までは主役のような扱いだったのに、その後の目を覆いたくなるような不遇はいったいなんなのか。
ここでは、原作における彼の設定及びストーリー展開から、日向小次郎というキャラクターについて検証したいと思います。

日向小次郎は主人公・翼のライバルの1人として登場します。
しかし彼は翼のみならず、若林にケンカを売り、岬とも関わりがあり、松山に貸しを作り、三杉が原因で失踪と、あらゆる主要人物と因縁づけられています。また彼には貧乏譚、親の死、ワケありの監督、影のように寄り添う長髪美少年など、ドラマ性の強いアイテムが揃っており、乱闘騒ぎ、苦労話、不調、挫折、失踪などの話題にも事欠きません。

たかが脇役にここまでネタを揃える必要があるでしょうか。
もちろん「ガンダム」のシャアとか「リンかけ」の剣崎とか、主役以上に派手な脇役というのは存在しますが、それはそのキャラが主人公にとっての「宿命の相手」であり、物語の主題に関わる重要な役割を担っているからです。しかしC翼における主人公の最高の友は岬、永遠のライバルが若林であることは明白で、翼は日向など全く眼中にありません。原作者も日向について「最初はそれほど期待していなかった」と述べています。では、日向の派手なキャラクター設定はいったい何なのでしょうか。

C翼における日向小次郎の位置付け−−それは「狂言回し」だったと思われます。
あらゆる人物と絡み、事件を起こし、話を展開させる原動力、それが彼に期待された役割でしょう。主役級3人を人格・実力・境遇ともに完全無欠な優等生に作ってしまったため(岬くんは少し違うが)、彼らだけでは物語が動かないのです。試合の合間に翼と早苗ちゃんの恋愛話を挿入したところでおもしろくも何ともありません。C翼に「ちょっとラブコメ要素のあるスポ根漫画」以上の深みを与えているのは、日向の存在によって生み出されるドラマ性なのです。

しかし、彼は狂言回しとしては魅力がありすぎました。
完璧すぎて面白味がなく、ケガでもさせないと話題のない翼に対し、人間的で波乱に満ち、「判官びいき」の観点からも最高のキャラである日向に注目が集まるのは当然です。もともとネタの宝庫ですから原作者としても描きやすく、つい肩入れしてしまったのでしょう。中学生編全国大会は完全に日向中心の話となり、ついに東邦は優勝してしまいます。
「弱小チームが強敵を倒し最後に優勝する」という定番の筋をやめ、「王者・翼が挑戦者をはねのける」という形にしたのは画期的でしたが、最後に東邦を優勝させてしまっては、主人公は日向だと言っているようなものです。いくら翼が偉いスゴイと説明したところで、実際に成長物語を体現したのは日向です。翼を主人公としたストーリーとしては失敗と言えるでしょう。

日向さん、CMで荒稼ぎしたようですが、やはり共演はこの人たちでしょう
か。N田っぽいイメージで描かれてましたが、その後の落ちようを見ると、
どちらかというとM園では・・・しかしこのCMも古いですね。元ネタわかる人
いなかったらどうしよう・・・。
そしてJrユース編の開始とともに軌道修正が図られます。
翼・岬・若林を中心とした「本来の路線」に戻され、日向の地位は一気に陥落します。日向は単なる「翼の引き立て役」となり、彼の行動は「翼にさせられない挫折を代わりにする」くらいの意味しか持たなくなります。「翼はどこへ行っても通用するが、日向は世界では通用しない」ことが強調され、ワールドユース編、ROAD TO 2002を通じて彼はひたすら挫折、挫折を繰り返します。

しかし日向が活きないと原作もおもしろくなりません。
続編の出来が今ひとつなのも、日向の使い方が中途半端であることが主要因と思われます。あまりに目立つためつい注目してしまうのに大したことをしない、という状況が延々と続き、日向の描かれ方への不満が原作全体への不満に直結してしまうのです。
同人誌のほとんどが日向絡みであるのも当然です。読者は皆、日向の活躍をもっと見たいと願っており、また日向を中心に据えれば話がおもしろくなることを知っているのです。同人誌における日向の存在感を実在の人物にたとえて言えば、攻小次は織/田信/長のごとき、受小次は源/義/経のごとき趣で(変なたとえ・・・)、どっちに転んでも結局主役は日向になってしまう、ということが彼の本質をよく表しています。

つまり日向小次郎は、あまり思い入れのないはずの原作者でさえつい主役のように描いてしまい、脇役に戻すには必要以上に貶めなければならない絶対的大スター、北島○ヤばりの「舞台荒らし」であったと言えるでしょう。
(しかしその日向さんも若島津の存在がなかったら・・・という話をこのあとに続けたかったのですが、あまりにも長くなってしまったので項目を分けることにしました。「カップリング研究・小次健2」をご覧ください。)


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