私はこれまで「新田×健」作品というものを読んだことがありません。
そもそもそんなジャンルが存在するかどうかも知りません。が、おそらくないと思われます。理由は単純で、中学生編、ワールドユース編を通じて、新田と若島津はまったく接点がないからです。「健受なら相手は誰でもいい」を標榜している私ですら、新田はまったくノーマークでした。「ROAD TO 2002」を読むまでは。
ワールドユース編終了以降めっきり出番の減った若島津ですが、そんな中で最も密接に関わりがあるのが新田なのです。新田は「ROAD TO 2002」で突然若堂流に入門、読切等でも若島津と一緒のコマに描かれており、現在連載中の「GOLDEN−23」でも若島津の実家で空手の稽古に励んでいることが言及されています。これをどう解釈したらよいのでしょう。T先生は若島津を新田とくっつけようとしているのでしょうか。しかし一体なぜ新田なのか。
C翼全盛期でさえ誰も想像しなかった「新田×健」。ここでは、この新しいカップリングについて考えてみたいと思います。
まず、新田瞬というキャラクターを振り返ってみましょう。
全日本少年サッカー大会で、南葛SCは翼たちが抜けた翌年も優勝しました。そのときのキャプテンが新田です。
彼は浦辺や岸田のいる大友中に入学しますが、1年目はまったくの無名。2年目に頭角を現し、その年に大友中は県大会決勝で南葛中と対戦することになります。ここで大友中躍進の原動力となったのはもちろん新田ですが、もうひとり重要な選手がいました。ゴールキーパーの一条です。
一条は新田が2年生になってから入部しているので、おそらく1学年下でしょう。彼は新田がキャプテンとして南葛SCを率いていたときのキーパーでした。新田が攻め、一条が守る、これで南葛SCは全国大会連覇を達成しました。大友中に入った新田は、一条が入学してくるのをずっと待っていたようです。あいつさえいれば守備は完璧、あとは自分が点取りゃ優勝だ、と。
つまり新田は「サッカーは所詮FWとGKだ」という思想の持ち主であると考えられます。
サッカーはFWしか経験がなく、「とにかくゴールすりゃいいんだろ」的発想しかない根っからのストライカー新田。守りと言えばGKのスーパーセーブしか思いつかず、ゲームメイクとかディフェンスコントロールなんかどうだっていい。守備がダメなら「うまいキーパーをつれてこなきゃ」という日向の短絡的思考回路とまったく同じです。しかも新田はそれで一度は日本一になっているのです。決勝で南葛に完敗しても、人間そう簡単に変わるものではありません。
そんな彼の目に、東邦学園はまぶしく映ったことでしょう。日向が攻め、若島津が守る。中盤なんかいてもいなくても一緒です。そしてその東邦に、南葛高校はついに3年間勝てなかった。ああ、やっぱりサッカーはFWとGKだ。新田は改めてそう確信したと思われます。
次に、全日本ユースにおける新田と若島津の関わりについて考えてみましょう。
チームメイトとはいえ、先述の通り新田は若島津とは接点がありません。むしろ日向の方が身近な存在です。初対面で「日向さんよ、そういうことは一度でも日本一になってから言いな」などと暴言を吐いていた新田も、ユースではすっかり心服してしまっているようです。高校選手権で力の差を見せつけられたことも大きいでしょう。新田の目標は「日向さんとツートップを組むこと」。エースストライカーの座を奪ってやる、などとは夢にも思わず、二番手に甘んじ嬉々としています。
そんな彼にとって、若島津は言わば「ボスの女」。尊敬する親分の連れてるマブいスケ、とくれば子分にとってはマドンナです。親分不在ともなれば「姐さん、あっしでよければ力になりやすぜ」なんて声のひとつもかけたいもの。しかしそう思っているのは新田だけとは限りません。
見苦しい「ポスト日向」争い。ここに日向が突如帰還、若島津をめぐって FW三すくみ状態になることが懸念される。 |
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